第31回公演『遠州の葬儀屋』

東京/1998年4月3日(金)〜5日(日) 紀伊國屋ホール
大阪/1998年4月9日(木)〜12日(日) 近鉄小劇場(近鉄小劇場提携公演)
作 土田英生(MONO)  演出 マキノノゾミ

CAST
大貫健太郎/冠婚葬祭会社「友交社」葬祭士  三上市朗
嬉野幸一/大貫の部下 木下政治(東京公演)
           野田晋市(リリパット・アーミー/大阪公演)阿部雅志/大貫の部下           林宏二
高畠博/大手葬儀会社「ライフ」代表    小市慢太郎
鮫島慎二/高畠の部下           岡村宏懇
観音寺兼伍/高畠の部下          奥田達士
馬場伸晴/高畠の部下           永滝元太郎
鈴置直樹/老舗葬儀屋「柳」二代目     酒井高陽
望月一二三/「つばき丸」船長       穂積哲也
讃岐衛/「つばき丸」航海士        友久航
三田村牧男/「つばき丸」航海士      長尾譲二

STAFF
演出助手 鈴木哲也
舞台美術 奥村泰彦
照明 大川貴啓
音響効果 堂岡俊弘
衣裳 三大寺志保美
舞台監督 藤吉成三 
宣伝写真 樋口裕昭
宣伝美術 白沢デザイン
制作 株式会社ネビュラプロジェクト 
企画・製作 劇団M.O.P.

▼あらすじ
 四月の四日。この日は毎年密かにパーティーが行なわれている。とある中規模都市の葬儀会社数社でつくる団体主催の慰安パーティーだ。一年づつ持ち回りで幹事を努め、今年はある大手会社が担当で、その関連会社が所有する観光用の客船の中が会場だ。この船は普段は静岡県の「御前崎・遠州灘県立公園」をぐるりと回っている。少し趣向の変わった試みに歓声をあげる参加者達と自慢気な幹事。
 しかし、この年の二月、別の地方の大手冠婚葬祭会社が客確保の為に病院と癒着していたことが事件になり、それを皮切りに次々各地方の葬儀会社が摘発されていた。「葬儀は公益事業である」と考える世間は、心情的に許さなかったのだ。
 そんな中、この慰安パーティーも一時は中止とも言われたが、五十年の伝統のあるこのパーティーは行なうことになった。「こんなことが世間にしれたら大変ですな」と口では言いながらも豪快に笑う参加者達。「普段笑えない分、この会では大いに笑おう」という主旨なのだ。最後の記念撮影用に全員ユニフォームである喪服を着用しているのが奇妙だ。
 そして船は御前崎港を出る。盛り上がり始める会。それこそ「箸がころんでも可笑しい」黒い服を着た男達。まずは今年の葬儀で面白かったことベストファイブなどを発表し合う。
 しかしやがて話題は世間での葬儀会社への風当たりのきつさに話がおよび、それを発端に、大手会社とライバル会社の論争が始まる。この二つの会社はずっとシェア争いをしており、犬猿の仲なのだ。感情が昂ぶり個人の喧嘩への発展していくが、「木魚みたいな顔しやがって」「棺桶に突っ込むぞ」などどうしても言葉が仕事柄を反映している。どっちにつくかで弱小会社も右往左往し、一向に収まらない。
 と、その時船長が船が座礁したことを報告に来る。エンジントラブルで船は完全に停止。遠州のからっ風に吹かれ、潮の流れにのりゆっくりと移動する船。しかし助けを外に求めることは出来ない。こんなことが世間にしれたら、それこそ大事だからだ。再び、幹事である大手会社を攻めるライバル会社。
 なんとか事態を収拾しようと頑張る船長だが、この船長が問題だった。小さい頃「タイタニック号の悲劇」に憧れ船乗りになったものの、ずっとこの観光船の船長をしていて大した事件もない毎日。「今こそ、運命の時」と張り切るあまり、押してはいけないボタンを押したり、切らなくてもいい機械を停止させたりと非常に間違った頑張りを披露。
 そして……船は静かに傾き始めた。さすがに喧嘩をやめて青ざめる参加者達。仕方なく協力関係を築き、船長指導の元、奮闘を始める。海水をかぶりながら「俺達は葬儀をあげる側、あげられはしない」と叫ぶ格好いい葬儀屋達。
 夜が明けてきた……救助の船が見える。頭上ではヘリコプターの旋回音。彼らはお互い笑いながら「ご愁傷様です」とつぶやいた。